伝統的修復技術を取り巻く環境 其の3

【文化財修理にあたる修復技術者】

文化財修理にあたる修復技術者を取り巻く環境については、よく理解しているとはいえません。

国宝重要文化財などを扱う修復技術者は保存団体として、木造彫刻修理について(財)美術院が、表装などに関しては国宝修理装潢師連盟が認定されています。これらの保存団体の修復技術者には大学出身者が増えてきました。かつては美術史系の大学出身者が中心でしたが、最近は芸術系、更には文化財を専門に勉強する文化財学科系からの出身者も多くなって来ました。

京都にも文化財を直接学問対象とする大学が増えています。

また、大学自体が学内に博物館相当施設を持って博物館学を充実させ、さらに学芸員資格を取りやすくしたり、文化財資料を一般に公開する大学も増えています。博物館相当施設と言えば昔は京都大学くらいしかありませんでしたが、現在では同志社大学、京都市立芸術大学、京都造形芸術大学、精華大学や花園大学など随分と増えました。

これらの大学で学んだ学生のかなには文化財修復技術者を目指すものも多くいることでしょう。

しかし最近の文化財修復はただ昔ながらの伝統的な技術だけでやっていれば良いおいう時代ではなくなってきました。これまでの伝統的な技術に加えて、修理を論理的・科学的に分析する視点も重要になってきています。21世紀の文化財修復は、博物館などでの文化財の保存・展示などに対して「保存科学」があるように、修理に対して「修復科学」といったものが要求される時代になるでしょう。伝統的修復という場合、昔ながらの職人意識による職人的な修理も重要な要素ですが、今後は修復技術者にも論理的思考(修復哲学)が更に求められるようになっていくでしょう。

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参考文献 文化財の保存と修復  文化座保存修復学会/編

 

 

 

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