「洗練された紙漉き」

今日とあすの2回に分けてご紹介いたします。

今日

紙料の調合

溜め漉き

流し漉き

明日
紙床つくり

湿紙の脱水

乾燥の方法

紙の調合

水を満たした漉槽に叩解した紙料をほぐしながらいれ、まず1メートルあまりの小さい竹あるいは木の攪拌棒でかき混ぜる。
この後漉槽の両側にある支柱に馬鍬を乗せ、手で前後に数百回激しく動かして、繊維を分散させる。
近年は手動でなく、電動スクリュー式攪拌機を用いることも増えている。
この後流し漉きの場合、粘剤(ねり)を加えて、さらに攪拌棒でかき混ぜて、漉槽の紙料濃度を均等にする。

溜め漉き

漉き方は大きく分けて、溜め漉きと流し漉きの2法がある。
溜め漉きは漉桁に挟んだ簀面に紙料液を溜めて、簀目の間から液を滴下させ、簀面に残った紙料で紙層を形成する技法である。
漉桁をまったく動揺させないと、紙面に凸凹が出来やすいため、緩やかに揺り動かす操作を加えることが多い。
この技法は主として厚紙を漉く場合に用いられている。
紙料液を少量汲めば薄紙も漉けるが紙面の厚さが不均等になって漉きむらが出来やすく、小さな破れ穴が出来ることが多い。

漉き流し

漉き流しは素面に汲みこんだ紙料液を揺り動かす、すなわち流動させ、さらに適度を超える余り水を流し捨てて紙層を形成する技法で、和紙の場合もっとも多い漉き方である。
流し漉きは粘剤を添加するとともに原則として三段階の操作をする。
第一の操作を初水(化粧水・数子)といい、浅く汲んだ紙料液をすばやく簾面全体に広がらせて、繊維の薄幕を作る。
次の操作を調子といい、初水よりやや深く汲み、前後に(紙質に寄って左右も)揺り動かす。求める紙の厚さによってこの操作を繰り返すが、「揺り」の操作は 紙の地合いや強度、すなわち美しさと強さに深い関係があり、一般に硬くしまって腰の強いことが望まれる半紙や半紙紙は強く、奉書紙のように柔らかさを求め られるものは緩やかに揺らす。
この緩やかさにさざ波を立てるような漉き方を宮城県では「漣漉き」といっている。極薄の天具帖紙の漉き方は流し漉きの極致といわれ、縦横十文字に、むしろ渦巻状に激しくゆすって地合いを整えるとともに粘り強さを与えている。
最後の操作は捨て水(払い水)といい、くみ上げた紙料の層が適当な厚さになると、漉き桁のてもとを下げ、水面に対して30度くらい傾けて紙料液の半量を流し落とす。
さらに漉き桁を反対の前方に傾けて残った紙料液を押すようにして向う側に流しだす。
この捨て水が流し漉きの重要な特徴で、コレによって簾上の液面に浮いている塵や繊維の結束の結晶などの不純物を除く。
塵船の中の紙料濃度は、一汲み語とに変化するので、漉きはじめと漉き終わりの紙の厚さを同じにするには、調子操作の回数や組み込み量を常に調節しなければならない。揺り動かす速度や方向、幅なども紙質によって異なり、紙かもリズミカルに行わねばならない。
それらの適度を勘で習得し、体に覚えこませるには長年の修練が必要であるが、そのような高度に洗練された技術で流し漉きが行われている。

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