「洗練された紙漉き」其の二

紙床つくり

漉きあげた湿紙は、水分をできるだけ除いた後に、上桁をあげ、簀を持ち上げて、紙床板(漉付板、漉詰板、積み板)の上に一枚づつ積み重ねて紙床を作る。
湿紙を紙床に移す時、床離れしやすくするため、手元の端を少し折り返しておく場合が多い。これを「耳折り」(ひびり、よせ)というが、いぐさや稲わらなどをはさむところもある。
昔は湿紙の水切りのため、漉槽側面に「桁持たせ」を設け、簀を湿紙ごと傾けて立てかけておき、次の一枚を漉いてから紙床に移した。
また「紙漉大概」によると、紙床に移した湿紙の簀…簀上に細かい円筒形の棒(ころばかし木)を圧しながら回転させて水切りした。
これは気泡を消すためで、今は気泡ができないように注意しながら湿紙を重ねる。
ところで、溜め漉きの場合は、湿紙を紙床に移す時、西欧風に一枚ごと毛布にはさむ。粘剤を用いていないので、質紙が互いに剥がれにくくなるのを防ぐためである。

湿紙の脱水

紙床に積み重ねた湿紙は多量の水分を含んでいるので、一夜ほど放置して自然に水分を流出させ、その上に麻布・押掛板などを置いて、圧搾機に描ける。
古くから用いられた圧搾機は支柱の穴に圧搾機の一端を差し込んで紙床にのせ、他端に重石をかけるが、急激な加圧を避けるため、この石は軽いものからだんだん重いものに変えていく。石圧法といって、紙床の押掛板の上に重石を乗せるだけのこともある。
近年は油圧・水圧による螺旋式の圧搾機を用いることが増えている。
また、豪雪地帯では、新潟県の小国紙のように湿紙の塊である紙塊を雪中に埋めて、積雪の重さで圧搾する雪圧法もある

乾燥の方法

圧搾しても湿紙にはなお60~80%の水分が含まれているので、さらに太陽熱または火力で乾燥する。
日本で昔から普及していたのは板干しで、紙床から剥いだ紙葉を干し板に刷毛で貼り付け、野外に並べて天日で乾燥する方法である。
本来は簾に接した面があるので、この面が干し板に接するように貼る。
欲しい他の表裏両面に貼り付け終わると、干し場に運んで板架台に立てかけておく。普通冬季は半日ほど、夏季なら約1時間で干しあがる。
天日干しは燃料なしで経済的に十分脱水でき、日光で漂白されて光沢のある紙が得られるが、量産には適さないし、雨天には作業できない。
そんな欠点があっても、良紙を作るためにこの天日干しに、こだわっている紙郷が多く、「ピッカリ千両」という言葉が残っているところもある。
火力乾燥法は季節・天候に関係なく、昼夜の別もなく、紙かも量産に適するもので、鉄板製の面に湿紙を張り、湯または蒸気で鉄板を熱して乾燥する。
これは近代に考案されたもので、固定式と回転式ガある。
固定式は、断面が三角形や長方形の細長い縦型のものと、横に平らな鉄板をおいたモノとがある。
回転式は、断面が正三角形の角筒である。
火力乾燥によると、紙面は板干しより平滑になり、緊密にしまって腰が強く、均質なものが得られるが、完全に脱水されないので日時の経過につれて重量を増やしたり、和紙独特の味わいが失われる欠点がある。
古来の板干しは日本独特の方法とも言えるもので、中国や朝鮮では熟した壁面「中国で焙碧(ホウヘキ)という」を用い、西洋では室内の縄とか竹にかけて乾かしている。

 

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