絵画の保存修理における基本方針 「修理によって失われるもの」

では、何かが変わった、あるいは失われたという感覚を皆さんもおそらく共有されるでしょう。

修理の前後で、折れの消失によって何が失われたのでしょうか。それは浅い空間の印象がひとつです。古びた様子から受ける長い時間の表現です。そして、料紙の表面の暖かさでした。

それらはいずれも画像が創りしたのではなく、伝世のうちに付け加えられたものです。文化財の修理に当たってはその真性性を守ることが要求されることは前にもう申し上げましたが、ではこうした古びた趣は真正性の一部をなしているでしょうか。こらえは否です。

例えば浅い空間を感じさせる折れは、料紙が摩擦によってどんどんすり減っている箇所ですから、致命的損傷です。修理によってなくさねばなりません。それが文化財の保存を危うくするものであれば、取り除かねばなりません。

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