伝統技術の継承と人材養成 其の二

 

〜伝統技術とは〜

「伝統技術」という言葉は、広辞苑などで引いても明確に定義する記述は見当たりません。経済産業省が定める伝統工芸品の指定要件には「伝統的な技術又は技法により製造されたものであること」という規定(昭和49年施行「伝統的工芸品産業の進行に関する法律」より)があり、これを受けて財団法人伝統工芸品産業振興協会では、「伝統的とはおよそ100年間以上の継続を意味し、その技法は、100年間以上、多くの作り手の思考錯誤や改良を経て初めて確立する」と定義付けています。それと同じように、私達も伝統技術とは、100年以上の単位で積み重ねられた技法、工程、道具によって行われている技術のことであり、そこで使われている材料が伝統的に生産されてきた材料であると考えています。長年にわたって伝承された材料、道具、技術が揃って、初めて「伝統技術」をよぶことができるでしょう。

伝統技術が100年単位のものである事と同様に、文化財の再修理の周期がおよそ100年であることは興味部会事実です。すなわち、現在修理されている作品は、100年前にでんとう技術・材料を用いて修理されたという事になります。現在の私達の技術は伝統技術を基礎としており、そのうえに改良された技術や材料を罪重ねる事によって、より安全性の高い修理を目指しています。つまり、伝統技術においても、現在の技術で安全に再修理することができる事が保証されているのです。その点、新しい素材は、まだ再修理の周期が回ってきていません。当面の処置による効果は得られても、長い時間をかけた経過観察をしなければ、安全性の確証が得られないのです。わたしたちが伝統技術を継承するのは、たんに伝統の墨守をしているわけではなく、安全性の保証という事を重要視しているためです。

 

セッションⅢー2より

国宝修理装潢試練名理事長 岡 岩太郎 氏講演より抜粋(平成22年現在)

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