伝統技術の継承と人材養成 其の四

〜修理材料・技術改良への試み〜

連盟の事業としては、加盟工房の連携による共同事業の設計、施工や、修理材料の共同購入、修理材料や技術の研究開発などいろいろとありますが、ここでは修理材料、技術の開発について触れたいと思います。

修理材料に対する認識という点では、昭和30年代以降、欧米から入ってきた自然科学的なモノの見方、考え方から大きな影響を与えられました。来日した海外の技術者からはなしを聞き、書物等で情報を得るために、科学と理念二裏打ちされた「文化財修理」の世界を知る用になったのです。

粗尿あん動きの中、昭和47年から、文化庁・東京国立文化財研究所(現・独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所)・国宝修理装潢師連盟の三者と、日本原子力研究所高崎研究所(現・独立行政法人日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所)により共同開発サレタ人工劣化絹は、20世紀の大発明であると自負しています。

それまでの補絹材料は、京都では雑多な美術品からいわゆる「似寄り」の絹の絵を選び、観時部分を使って補絹をしていました。しかし、この方法で歯、切り取られる美術品が損なわれることに加え、本紙と補絹部分の絹の強度の違いが本紙に負担を掛けるという問題があります。更に、絹目や糸の太さなどの折り目の違いに寄って風合いが異なることや、欠失部分の大きな作品の場合、補修用の絹が不足し対応出来ないという難点があります。

織目を復元し、本紙の脆弱度似あわせて劣化させた絹を人工的に作ることが出来ないか数年に渡る思考錯誤が繰り返された電子劣化絹が開発されました。現在、海外の絹本の東洋絵画の修理に、この人工劣化絹が使われておりますが、これで完成とは考えておりません。自然劣化の絹に近づくよう現在もなお研究改良に努めています。

又、紙本の修理については、30年ほど前から紙の繊維分析が始まりました。。顕微鏡による調査や専門家への依頼などを通じて、繊維の種類、繊維長、紙下降の有無などを知ることができるようになったのです。今まで経験と勘から判断されていた本紙の性質を科学的に理解する事によって、補修容の紙を復元する試みが始まりました。材質的に本紙に適合する補修紙を復元制作することで、視覚的にも力学的にも本紙に取って他企画な補修をすることができるようになりました。現在では、文化財保存修理所や各工房出も紙漉場を設け、技術者自身の手で補修紙が制作されるようになっています。

又、それらの補修材料を用いられるDIIPS方式について簡単にご紹介致します。

まず、乾式肌上法は、このユオなシンポジウムの機会n何度かご紹介させていただいておりますが、修理の根幹となる「肌裏紙の打ち替え」についてのものです。本紙を支える肌裏紙の打ち替えは、100年に1℃の本格修理において最も大切な工程です。打ち替え方法刃大きく分けて2種類あります。ある程度の水を使って接着剤を膨張させて肌裏紙をめくる湿式肌上法と、予め表うちを施して起き、裏から肌裏紙の繊維をほぐすように除去する乾湿肌上法です。今回、詳細には触れませんが、30年のほど前に開発されたこの乾式肌上法は、特に裏彩色が施された絹本絵画の修理に対して非常に大きな効果を発揮します。湿式の場合、裏彩色を破損し、絵画表現を大きく変えてしまう危険性があります。乾式肌上法では、ぞ感を掛けて裏の繊維をほぐすように取るこtに寄って、裏の表現を変えずに肌裏打ち紙を打ち替える事ができます。ただし、乾式は湿式の数十倍の時間が掛かるという難点があります。しかし、ながら、保存上の安全性と言う面から考えると、乾式のほうに多くの利点があるといえるでしょう。

DIIPS方式も、このような機会に何度かご紹介させていただいております。デジタル画像を利用して補紙の形状をデータ化し、データに基づいた補修紙の成型を行う事によって作業性を高め、手作業と同じ程度の仕上がりを実現する方法です。大まかな工程でしましたとおりですが、紙本の、特に虫害が多い物には、大変有効な処理方法であると言えます。

この乾式肌上法とDIIPS方式に共通しているのは、より安全で的確な修理を目指して開発された技法である点です。前者は以前より作業に時間が掛かるようになりましたが、後者では作業性の良さも加わっています。いずれにしても、安全性という再優先事項を中心に考えた時、珍念二おける現場の大きな技術革命であったと言えるでしょう。

 

セッションⅢー2より

国宝修理装潢試練名理事長 岡 岩太郎 氏講演より抜粋(平成22年現在)

 

 

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