(ハシラ)
掛け軸の作品の左右に切り継いである裂地または紙のことを呼ぶ。3分〜2寸2分(9mm〜 6.6cm)くらいまでで、大幅になると広くなる。

肌裏打(ハダウラウチ)
裂地や作品に直接つく裏打(最初に裏打をする)のこと。表具の出米上がりを左右する重要な工程である。シワ、柄の曲がり具合、表へのシミなどはここで確定する。本草、美濃紙を使用。打ち刷毛は使用しない。下げ干し、置き干しにすることが多い

 

ハ宗(ハ双、発装)(ハッソウ)
掛け軸の上部半円(かまぽこ型)になった横木のことをいう。材は杉の白太(杉の丸太の 外周に近い白い部分)で、大きさは軸棒の太さに比例する。

八宗取りつけ(ハッソウトりつけ)
掛け軸の上部に半円形(カヽまぼこ型)の棒を糊づけすること。

ハ宗の出隅(ハッソウのデズミ)
八宗の左右の半円形の下の隅をいう。左右のつけ根と同じところ。

ハ宗袋(ハッソウブクロ)
掛け軸の上の部分でハ宗(半円形の棒)を貼りくるむ裏側の紙をいう。仕上がり状態では、 福島絹が表に貼り重ねてある。

パネル張り(ぱねるバり)
薄いベニヤ板の裏面にカマチを取りつけた板を画板、パネルという。そのパネルに紙や写真などを張ることをパネル張りという。

 

張り手(張り手紙)(ハリテ・ハリテカミ)
たて目に食い裂いた幅8分〜1寸(2.4〜3cm)くらいの紙をいう。総裏打のときに左右の 仕上げの耳あげをする 耳に毛先だけを貼りつけて、耳の際から切れることを避け、また、 ときに強度を増す効果がある。補強紙ともいう。

 

ひげを出す(ひげをダす)
書、墨絵を裏打する場合に裏面より湿りをいれて、刷毛で平らに作品を仲ばすときに、墨 色を刷毛の毛先でこすって、白い部分に薄い墨跡をつけてしまうことをいう専門用語。と くに宿墨や濃い墨の場合、注意を要する。作品の表を出して仮貼板に張るときに、誤って 墨の上をなでてしまうときにも同じことが起こる。一度ついてしまったひげはなかなか落 としにくい。

ビ二−ルシート(フィルム)
薄いビニールシートで幅180cm、長さ200cm、厚さ0.01〜0.03mmの透明フィルムが1巻きに なっている。それを裁断して、掛け軸を解体するときに下敷きとし、湿りをいれた作品を 巻きくるんでおいたり、上掛け用の養生紙として使用している。打ち刷毛使用のときに和 紙の上に置いてももけを防ぐのに使う。

(ヒモ)

掛け軸の紐は啄木というが、3色以外の色紐のことも啄木ということがある。紫、白茶、茶、鶯、グリーンなどがある。その場合は紫の紐、白茶の紐などという。

表装(ヒョウソウ)
表を装うことで広義には公証される技能の国家検定制度にもあるように、表装の中で壁装 作業(クロス貼り)と表具作業とに分かれている。クロス貼りと表具が含まれると考えら れる。ここでは狭義で解釈し、表具すなわち掛け軸・屏風・巻物・額・ふすまなどを制作することをいう。表具屋・表具師・経師屋・装演師が制作しているもの。

 

表装技術(ヒョウソウギジュツ)
表装の技術で、糊の作り方・刷毛の使い方・裏打紙の選択・刃物の扱い方・表装専門機械 の使用法など、道具や材料の知識を含めて専門家としての必要な技術・知識をいう。掛け 軸・屏風においては、取合わせといって裂地の種類・色・寸法・形式・塗りなどと、軸 先・紐・箱の広い知識が求められる。

表装糊(ヒョウソウノリ)
表装用の化学糊で、接着剤メーカーのヤヨイ化学工業鰍ナ製造している。切継用、裏打用 がある。ビニール袋2kg入りでダンボール箱詰め。

平彫刻刀(ヒラチョウコクトウ)
彫刻刀の平刃のもので、刃幅が3分(9mm)くらいまでのものが扱いよい。

風帯(フウタイ)
大和仕立、茶掛仕立などの掛け軸にはハ宗から天と中廻しの境まで2本の帯が下がっている。 それを風帯という。昔、中国では驚燕といい、屋外で掛け軸を鑑賞するときに風帯でつば めを追い払うことを目的に取りつけたといわれる。それが日本で現在のように形式化され たものである。風帯の下の左右の白い房絹は露という。

風鎮(フウチン)
掛け軸を下げたときに平らに安定するまで、または風にゆれ動くときなどに軸先の左右に 風鎮を掛ける。常に風鎮を掛けておくと、その重みで軸先のつけ根で裂地が裂けてしまう ことがあり、常には掛けないものである。瀬戸物でできた直径1寸(3cm)くらいの玉に 房のついた2個一対のもの。

福島絹(フクシマギヌ)
掛け軸の巻き上げた外側に貼りつけてある薄い絹のことをいう。この絹の産地福島の名が つけられたものである。浅黄、白茶、ねずみ色、紺色などがある。上巻(絹)、裏巻(絹)と も呼ばれる。

覆輪(フクリン)
紙や裂地の端を薄い染紙、金・銀紙などで細く貼りくるむことを覆輪という。既製の色紙 は周囲が金・銀紙で覆輪してあるものが多数である。

覆輪定規(フクリンジョウギ)
覆輪や筋を作るのに必要な定規は3厘、5厘、7厘、1分(lmm、1.5mm、2.1mm、3mm)などの 幅があり、普通は5厘(1.5mm)幅と1分(3n)幅が定規の左右についた覆輪定規(3分 ×2寸×1尺5寸〈1cmx6cmx45cm〉)がある。

 

袋張り(フクロハり)

 

 下張りの方法の一種で紙の周囲に1分(3mm)の糊をつけて張ることをいう。上等の方法になると薄い石州紙(薄い上質の和紙の一種)を食い裂いて、水刷毛で湿りを入れて水糊で一枚一枚湿りをいれて袋張りをする。

 

フラッシュ

 

本の桟で枠組みされているものに、両面から薄いベニヤ板を張りつけた内側が空洞の板。 額の本体は、昔はふすまの芯と同じ骨でできていたが、省略化と量産化に適するフラッシュの額の芯が増えてきている。フラッシュに対応するものが組子。

 

ヘキサチーフ

 

 木炭、鉛筆で描いた絵に吹きつけて、流星が落ちないようにする定着剤。主成分がアルコール液で弱揮発性。柱卜け軸には作品の色落ちに表面から軽く吹きつけ、かわいてから2〜3回繰り返すと効果が出る。たっぷり湿らせては逆によくない。

 

べ夕張り

 

 骨縛りを終えたあとに和紙、透き止め紙(光を通すのを防ぐために色をつけた紙)などの全面に糊(糊:水=1:1)をつけて、骨縛りの上に張ることをいう。

 

ヘラロ(へらクチ)

 

 仮貼板に張ってある作品や裂地などに、ヘラバサミが貼ってあるところをヘラ目という。裏打して仮貼板に張った直後に、仮貼板に中側がつかないためにヘラロから空気をいれて張り上げた作品や裂地を浮かせる。乾燥後、ヘラロからヘラを差し込んで作品・裂地などをはがす。

 

ヘラバサミ(ヘラザシ)

 

 裏打をした作品、裂地を仮貼板に張りつけてしまうと、はがすときに、はがし取るところ がないときれいにはがせないため、ヘラの幅より大きい紙を、周囲に糊づけした部分を横切るように貼りつけておく。ヘラバサミのところは仮貼板に糊づけされていない。ヘラバサミは裏打紙でも、作品の落とし紙でも寸法があればよい。5〜7分×2寸(1.5〜2cmx6cm)くらいがいちばんよい。

 

扁額(ヘンガク)

 

 和室の鴨居の上などに掛けられている細長い額を扁額という

 

棒裁ち(ボウダち)

 

 和紙と和紙を継ぐ辺の処理に食い裂きと棒裁ちがある。棒裁ちは定規でまっすぐに包丁裁ちをすることをいう。裂地や絹本の肌裏打の継ぎは、この方法で重ね合わせを5厘〜1分(1.5〜3mm)と細く重ねて裏打をしていく。

 

包丁裁ち(ホウチョウダち)

 

 紙、裂地を定規で押さえてまっすぐに包丁(丸包丁)で裁ち切ることをいう。ロータリーカッターで切っても同じことがいえる。ロータリーカッターは丸包丁の代用品で、待ち方使い方は丸包丁に準じて行う。なれて熟練してきた人は丸包丁へすすんだほうがよい。

 

棒継ぎ(ボウツぎ)

 

 棒裁ちしたものを5厘〜1分(1.5〜3mm)の重ねで和紙を継ぎ合わせること。障子紙に棒継ぎにしてあるものが今でもある。裂地や絹本の肌裏打は、この棒継ぎでないと糊が表面ににじみ出ることがある。食い裂き継ぎは無理。

 

星穴(ホシアナ)

 

 千枚通し、目打ち、星突きで印した穴のことを星穴または星、星印という。

 

星を突く(星印・星穴)(ホシをツく・ホシジルシ・ホシアナ)

 

 千枚通し、目打ち、星突きなどと呼ばれている、柄のついた先の鋭利な大い針で印をつ毘穴をあけることを星を突くといい、その穴を星印、星穴という。穴が夜空の星に似ていそから、このような呼称になったようだ。

 

細川紙(ホソカワシ)

 

 楷紙の生漉きの丈夫な和紙で、2尺×3尺(60cmx90cm)の大きさ。埼玉県の小川町で多く生産している。

 

仏表具(ホトケヒョウグ)

 

 仏、曼陀羅、観音など仏教に関する絵や書は、仏表具といって独特の形式がある。真の真、行、草がこの形式である。

 

骨(ホネ)

 

 12mmx14mm角の棒を格子状に組み合わせて、外周をカマチ21mmx16mm角でかこった額、屏風、ふすまの芯のこと。材質は杉の白太(杉の丸太の外周に近い白い部分)を使う。

 

骨縛り(ホネシバり)

 

 額、屏風、ふすまの骨に最初に下張りをすることを骨縛りという。額、屏風、ふすまを作るにあたってはいちばん太切なところである。組子、カマチにしっかりと糊づけをしなければ故障の原因になる。

 

本草(ホンクサ)

 

 楷を原料とした和紙で、糊ふくみのよい白色の紙(1尺6寸×2尺3寸〈48cmx70cm〉)。画簾紙などの紙の肌裏打に適する。