前袋(マエフクロ)

 

 ハ宗袋と軸装の表側の裂地部分をいう。

 

マクリ

 

 作者が書や絵を書いたばかりの書画で、裏打も額装もしていない未加工の書画をマクリという。新作の書画はマクリで売買されることが多い。いったん裏打されたものは古物とみなされる。

 

増裏打(マシウラウチ)

 

 肌裏打が乾燥してからする裏打。作品や裂地の安定性を増し、周囲の裂地との厚みの調整をする工程である。薄い糊でよく打ち刷毛を使用する。美濃、美栖の薄口、極薄口を使う。

 

ママコになる

 

 糊を水で薄めていく過程で、急いでたくさんの水を入れると水と糊の固まり(だんごくらいの大きさ)に分かれてしまう。このような水とかたまりになって溶け合わない状態をいう。この状態になった糊は、時間をかけて練っていくか、裏ごしを使ってこすとよい。

 

丸幅(マルハバ)

 

 裂地の幅を裁たないでそのままの幅をいう。裂地の端(耳)カヽら端までの幅をいう。上下を寸法に切っただけの裂地の左右はそのままの状態。

 

丸表装(丸表具)(マルヒョウソウ・マルヒョウグ)

 

 掛け軸の形式には何種類かあるが、これはいちばん基本的な形で作品の上下に一文字がつき、その周囲に裂地、紙をめぐらした表具。天地と柱と一文字で成り立っている掛け軸の形式。

 

丸包丁(マルホウチョウ)

 

 専門家が裂地や紙の直線裁ちに使用しているもので、半円形の刃先が片刃である。研ぎ方と使い方にかなりの熟練を要するので、包丁はロータリーカッターでは物足りなくなった熟練した)時点で求めるとよい。

 

美栖(美須)(ミス)

 

 楷を原料とした和紙で、胡粉が漉き込まれている。白いコシのしっかりした紙で本美栖、文化美栖などの名称で市販されている。増裏打、中裏打、上裏打などに使用されている。胡粉も白土と同じく掛け物をやわらかくするために漉き込まれた。

 

水刷毛(ミズバケ)

 

 鹿毛、羊毛の刷毛で、作品や裂地に軽く平均に湿りをいれるのに使う。平均に湿りをいれるには、かなりの熟練を要する。なれない人は霧吹きを使用したほうがよい。

三ツ目錐(ミつメキリ)

 

 錐の先が3分(1cm)くらい三角形で、鋭利になり、上部が丸くなっている錐。

 

美濃紙(ミノガミ)

 

 岐阜県(美濃国)で和紙として生産されたことによって、その名が残る。美濃紙は楷を原料とし、障子紙、日本画の模写用に使われている。また、裂地の裏打に最適で、薄くてシャリっとしたコシのある紙である。濃い糊をつけても扱いやすい。手漉き和紙2尺×3尺(60cmx90cm)と機械漉きとがある。一般には薄口と中厚(中肉)。

 

耳(ミミ)

 

 裂地の左右の端のことを耳または端と呼んでいる。

 

耳あげ(ミミあげ)

 

 耳スキ前の工程のこと。仮貼板からはがした掛け軸の左右の端の、余分な紙を裏面に引き返して、耳折れ端より5厘(1.5mm)ほど平均に裏打紙をはがし、強く折り曲げることを耳あげという。

 

 

耳折り(ミミオり)

 

 掛け軸の左右の端は切ったままではなく、裏側に(1分〜1分5厘<3〜4.5mm〉)折り返してあるのが普通。その折り返すことを、耳折りまたは耳折りをするという

 

耳スキ(ミミすき)

 

 掛け軸の左右の端の仕上げ工程で、カッターナイフで余分の総裏打紙と張手紙をそぎ取ることを耳スキという。切れる刃物で押し切るようにする。掛け軸の裏打の手際の見せどころ

 

向う糊(ムコうノリ)

 

 裏打紙に糊をつけないで、作品や裂地に糊をつけることをいう。通常は裏打紙に糊をつけて作品や裂地を裏打する。

 

銘木(メイボク)

 

 形や材質がとくにすぐれている木材のことをいう。軸先では花梨、紫檀、黒檀、杉などがある。

 

元糊(モトノリ)

 

 糊の薄めていない元の糊のことを元糊または原糊という。

 

ももけ止め(ももけを貼りつける)(ももけドめ・ももけをハりつける) mirror server

 

 和紙の裏打のときにシュロ刷毛でよくなでつけると、和紙の繊維が表面より飛び出し、表面が毛布のような状態になった繊維をももけという。裏打の糊を糊刷毛に少しふくませて、その糊刷毛で和紙の表面に貼りつけていくことをももけ止め(毛羽止め)という。これをしないと、掛け軸が仕上がってから毛羽の先にはこりやごみがついて、掛け軸の絵をよごすことになる。

 

ももける

 

 裏打紙に糊をつけて貼り合わせなでつけるときに、繰り返してなでつけていると和紙の繊 維が毛状に浮き上がってくることをいう。毛羽立つと同じ意義。