仏画の染み抜き事例

琳派で150年くらい前の作品というお話で、真贋のほどはともかく、いずれにしてもこの染みをなんとかしたいということでお預かりいたしました。

細部を細かく調査していくと、
裏側にまで突き抜けている強い染みでした。


一番注意を払ったところは、紺色の後光の色落ち、朱色の台座部分の強い染みでした。
作業の工程としましては、

ドライクリーニング
   ↓
  色止め
   ↓
 解体作業
   ↓
水による洗浄
   ↓
薬品による染み抜き作業

本来であれば、水あるいはぬるま湯程度で終えるべきなのですが、
あまりにも強い染みで鑑賞の妨げになるということで、致し方なく
薬品を使用することになりました。

まだ少しシミが残っているようですが、作品の顔料にまで影響が出ては台無しなので
1歩手前で終了とする。画面が波を打っているのは、裏打ち前なので御容赦いただきたい。

染み抜き前
染み抜き後

                   

菩薩様の周りに、わからなかった金色が出てきた。どうやら金箔のようだ。
獅子の前足の強い汚れがほぼ取れたことに関しては、ここに記しておきたい。

たまに、染み抜きのコツはなんですか?と聞かれることがあるが、下手な技術や
経験値ではなく、最大の武器は「用心深さ」だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA