今回は作品が擦り切れている部分、虫食いなどで穴が空いている部分の補彩、欠損部分の補修などがテーマです。
まず、折れているところには通常の白い和紙で補強します。そして、黄土色の紙で補強している部分がありますがこれは、擦り切れて本紙部分が残っていない場合、時代色がすでに付いているのに、裏打ち紙の白い和紙が目立ってしまうため作品の地色と近い色合いが出るように染め紙を使用します。今回の補彩に相当するところでも有ります。この部分を面相筆などで補彩することも有りますが、この方法が妥当であると考えました。
理由としましては、現在の修復保存の考え方は欠落した部分をわからなくすることより以上に、第一に、「作品の表現を現状維持する」ことと、次回の修理作業を作品にダメージを与えずスムーズにできるようにという考え方からです。作品を鑑賞するときにじゃまにならないように。決してわからなくすることが目的ではないからです。
以前の考え方は、作品を「生きているもの」として捉えていたので、キズ等は元通りにするということから、修理部分をわからなくすることが目的でした。
この辺については、https://yoshihara999.com/?p=643ご参照ください。
作品の裏側にも多くの想いが込められているのです。