修復材料としての紙の復元について少し触れておきたいと思います。
まず、繊維の種類を観察します。顕微鏡によって、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)中国の紙の繊維などの区別ができるようになります。更に、繊維の長さを見ていくと、長芋の、短いものもあり、加工してあるものと未加工のものがあることが分かって来ました。
更に視点を変えて、繊維の長さや切り口有無、状態などを調べる事によって、古文書のように記録を残すための紙、絵を書くための紙、またお経を書く紙など、すべて加工方法の違いによって紙の種類が、時代に於いて大きく区別されているように見えます。
漉いただけのものが生の紙で、これは文字を書くだけの記録用紙として使われます。
生の紙を、打つ、染める、化粧する、これらを紙加工といい、打つ事によって紙の密度が高まります。密度は厚さと重さと面積から算出しますが、紙が漉かれた状態から密度を上げるには、打つなどの加工をしていると思われます。表面の色艶(いろつや)、滑らかさの違うものも同様です。
実際の復元作業を通じて、様々なことがわかってくるのです。
このようにして、修復時に様々な料紙の裏面などから極微量の繊維を採取しデータを取るように指定ます。この十数年で1000例近いデータを集めることができました。(平成12年)
これが5000例を超えるとデータによって料紙の用途における加工や時代などの分類がはっきりとしてくるものと期待しています。
参考文献 伝統に活かすハイテク技術より 文化財保存修復学会/編