装潢技術の変遷 その3

近年では、脆弱な本紙を支える肌裏紙(1枚目の裏打ち紙)も改良が加えられています。

劣化絹が最新の科学技術で加工されているのに対し、紙の場合には従来の手漉き和紙と同素材、同組織で伝統的な技法で作られています。特徴的にも伝統的な和紙と変わるところはありません。ただし、普通、和紙の寸法は60㌢×90㌢ですが、改良したものは60㌢×250㌢と長版となっており、長尺の画絹に描かれた巻物などの修理に欠かすことのできないものとなっています。

このように前者は科学技術で加工し、後者は伝統技術を改良して現代に活かすなど、装潢技術も進歩を遂げているのです。

ここに至るまでの模索は、素材自体を知る糸口友成、また新技術の導入は修理方法をも変化させて始めています。修理前にカラー、モノクロ、赤外線、X線などの写真撮影で傷み具合が詳細に記録され、それを基に修理方針が立てられます。また、修理中にも記録が取られ、次回の修理時に今回の修理内容を把握することができるようになっています。しかし、実際に工房で行われていることは伝統技術そのものです。糊の使い方素材の選び方、仕上げ方などは、伝統的に受け継いだ技術が中心となっています。

更に、表装形式一つをとっても、これ以上、改良の余地がないほど完成度が高いともいわれています。言い換えると、新技術や新機器は、より高度な完成を目指すための補完的なものです。

接着剤にしても、これまで色々と工夫や改良がなされてきた歴史があり、今後も続くと思われます。それによって、今導入されつつある新しい技術や方法、考え方も100年後には伝統技術の一部になっているかもしれません。

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