上図は、当館の修理保存件数の推移です。
修理保存を実際に担当する専門家が配置されてから、本格修理に比べて対症修理の件数が飛躍的に伸びています。解体を含む大掛かりな修理は、文化財によっては、どうしても周期的に必要になりますが、現実問題としては、経費や時間や文化財自体への負担を考えると、できる限り先送りにしたい処置でもあります。しかしながら、劣化や痛みの著しい文化財に対して、ただただ見守っているだけでは失われるものが多く、活用のできないというジレンマがあります。そこで、やはり対症修理の必要性が年々高まって来ているというわけです。文化財へのアクセスを安全に行うための処置は、時に緊急を要することが多いのも事実です。ぼんやりとした遠い将来のことではなく、目の前の問題を確実に解決していくこと、これが文化財へのアクセスと直結しているのではないでしょうか。
参考文献 文化財の保存と修復より