文化財を活用する博物館のもう一つの役割は、文化財の修理です。今から30年前の昭和55年(19980)に、京都国立博物館二修理施設が設置され、奈良国立博物館には平成20年(2008)に、九博でも開館と同時に設置されました。東京国立博物館でもそれ相応の施設が宋座しています。
文化財の修理施設画が設置されている背景には、修理する人たちが安心、安全に修理出来る場所、あるいは文化財にとっても安心、安全を保ちながらしっかり修理される場所は、博物館であるということであります。現在、これらの修理施設に伝統的な修理技法や手法を持つ工房が入って活動されています。
そこで、安全性が確保され、また、各工房同士が集うことで切磋琢磨しています。もちろん、その中で素材や材料の共同開発も行われています。難しい修理になると共同研究も行います。そして、今、修理に係るそれぞれの団体では研修を行い、資格制度にも関心を向けながら新鮮な修理世界の展開に挑んでいるわけです。
そして、九博では、そうした修理の生々しい実態を、市民の地域が理解し、文化財修理の大切さとその意義の理解画広がっていく事を嫌いしています。また、市民が修理を知り、修理に大きな関心を寄せることによって、次の新しい担い手がドンドン生まれてくる可能性に期待して、修理施設を運営しています。具体的には、九博では国宝修理装潢師連盟の九州支部の方々が修理しています。この修理の世界は、かつて閉ざされた秘密の世界でした。そのタブーカラの脱却として、廊下に窓を設け、外から子供立ちを始め市民も見ることができるようにしました。(下図)
この効果の意義を私どもは大事にして行きたいと思っています。
また、教育普及の一環でもありますが、子供立ちに保存に関心を持ってもらうために「なりきり学芸員」と読んでいますが、保存修幅を体験できるような機会も設けています。そいて、修理だけでなく、修理した結果もこれからはしっかり公開していくことで、修理、保存のあり方を一般の人々に広くご理解頂くようにしていきます。このことはすでに東京国立博物館も積極的にやられています。こうした積み重ねが、文化財の保存に向けた人材養成への道を大きく拓くことだと信じています。
学会の活動にはあまり触れられていませんでしたが、学会ではポスターセッションなどの機会を通じて文化財の保存に関心のある市民たちに積極的に公開しています。実際に学会のポスターセッションを見に来る関心を持った市民が大勢います。それから、学会活動として難しい、高度な話ではなくて、市民に向けて情報を発信していく努力を通じて、私ども文化財保存修復学会と姉妹関係にある日本文化財科学会も文化財の守り手を育てることに学会全体としても挑んでいるという事を是非ご理解いただきたいと思います。
参考文献 文化財の保存と修復より