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伝統的修復技術を取り巻く環境 其の1

【伝統的修復技術を取り巻く環境】

絵画・彫刻・書跡など日本古来の文化財の修復には、伝統的な技術と同時に、伝統的な修復の材料となる紙や絹や裂や糊、材木や漆・膠(にかわ)など画不可欠です。

同時にいたんだ表面の修復や劣化した部分の材質今日かなどに伝統技術だけで対応出来ない場合もあり、新しい技術・材料の開発画必要となって来ます。

其のために「修復」おいう概念の、だんだんに「伝統的なもの」カラ、21世紀の新しい概念・理念へと変化が求められるものとおもわれます 。

今日、文化財保存や修復技術を専門とする学科を設置した大学が増えており、この会場にも多くの若い学生の方がおられます。中には文化財修復技術が今後ますます発展して行く可能性はあるとしても、伝統的な修復を地理膜環境は、ある意味で危機的な助教に置かれており、必ずしも楽観できるのばかりではありません。

これは平成14年の論文で、現在(2013年)も環境としては改善の兆しは感じられないというのが現状です。

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参考文献 文化財の保存と修復

 

伝統的な保存修復を取り巻く環境

来週は、伝統的な保存修復を取り巻く環境についてご紹介したいと思います。

其の1 伝統的修復技術を取り巻く環境

其の2 伝統的修復技術保持者の現状

其の3 文化財修理にあたる修復技術者

其の4 修復時の温湿度や生物被害などの保存環境

其の5 修理費などの経済状況

装潢技術の変遷 その3

近年では、脆弱な本紙を支える肌裏紙(1枚目の裏打ち紙)も改良が加えられています。

劣化絹が最新の科学技術で加工されているのに対し、紙の場合には従来の手漉き和紙と同素材、同組織で伝統的な技法で作られています。特徴的にも伝統的な和紙と変わるところはありません。ただし、普通、和紙の寸法は60㌢×90㌢ですが、改良したものは60㌢×250㌢と長版となっており、長尺の画絹に描かれた巻物などの修理に欠かすことのできないものとなっています。

このように前者は科学技術で加工し、後者は伝統技術を改良して現代に活かすなど、装潢技術も進歩を遂げているのです。

ここに至るまでの模索は、素材自体を知る糸口友成、また新技術の導入は修理方法をも変化させて始めています。修理前にカラー、モノクロ、赤外線、X線などの写真撮影で傷み具合が詳細に記録され、それを基に修理方針が立てられます。また、修理中にも記録が取られ、次回の修理時に今回の修理内容を把握することができるようになっています。しかし、実際に工房で行われていることは伝統技術そのものです。糊の使い方素材の選び方、仕上げ方などは、伝統的に受け継いだ技術が中心となっています。

更に、表装形式一つをとっても、これ以上、改良の余地がないほど完成度が高いともいわれています。言い換えると、新技術や新機器は、より高度な完成を目指すための補完的なものです。

接着剤にしても、これまで色々と工夫や改良がなされてきた歴史があり、今後も続くと思われます。それによって、今導入されつつある新しい技術や方法、考え方も100年後には伝統技術の一部になっているかもしれません。

装潢技術の変遷 其の2

装潢技術は本来、伝統技術によって支えられています。

しかし、修理の定義や中身が少しづつ変化してきた結果、新しい材料や技術が導入され、それ自体も伝統的な技術になりつつあります。例えば、絹に描かれた絵画の欠損部分を補填する場合、かつては無用となった古い絹絵の中からオリジナルの絹に近いものを見つけ出し、切り取って補填材として来ました。しかし、よく似た古い絹地を安定的かつ大量に確保することは困難であるため、大画面を修理するには不都合が生じることが少なくありませんでした。

そこで、新しい絹を作り、人口老化をさせて使用する方法が昭和30年代後半から研究され始めました。その後、約10年ほどで現在の劣化絹が完成したのです。

この技術は東京国立文化財研究所の指導と高崎原子力研究所の協力で共同開発されたものです。

電子線のよる劣化絹は、まずオリジナルと同じ組織の絹を織り、電子線を照射して人工的に繊維を劣化(エージング)させたものです。現在ではすべての修理に使用されており、この考え方や技法も確率されています。以前は、欠損箇所が何とか塞がればよしとしていましたが、劣化絹の登場で、欠損箇所を補填するとオリジナルに同化して一体化し、あたかも、もとの1枚の本紙ようになります。このようにして、現在では補填材としての絹を充分に入手できるよになっています。

※ただし、まだまだ市販はされていないため一般には普及はしていないというところが現状です

 

電子線劣化絹の開発

絵絹への電子線照射作業

また、特殊な例として、文化庁・東京国立文化財研究所(現 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究 所)・国宝修理装潢師連盟の三者と、日本原子力研究所高崎研究所(現 独立行政法人日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所)の共同による「電子線劣化 絹」の開発(昭和47年〜)が挙げられます。

この方法はその後も改良が重ねられ,劣化に供する絹そのものの様々な織り方の工夫になどにより,現在では130種類に及ぶ織見本が完成し,さまざまな絹本文化財の補修に適応できるまでになっています。

参考文献 文化財の保存と修復    国宝装潢師連盟HPより

修復技術の変遷 其の1

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修理に対する考え方は、昔と今ではかなり変化して来ました。以前は、所有者や修復技術者の意向や好みで修理されてきました。今も、職人の世界では自分の腕をどうゆう所で表現しようか、という気風が残っています。例えば、欠失箇所をわからなくするため、また見た目も美しくするために復元補彩などを施し、時には周りの傷んだ部分を切り取ってしまうことさえ行われたいました。

このような修理は現在出来ません。今日ではその文化財の現状維持にもっともよいかどうかを考え、場合によっては仕上げリの美しさを犠牲にすることさえ求められます。

こうした考え方は、昭和25年に「文化財保護法」が制定され、昭和43年に文化庁が創立されてから、そこで練られた方針を基に培われたものです。国宝や大きな修理事業の時は、特別の修理委員会が設けられることがあります。指定品の場合は、国から修理費用の補助金が交付されています。

次回は、実際に行われている【装潢技術】の内容についてご紹介致します。

装潢(そうこう)とは

「装潢(そうこう)」という語句は、奈良時代の古文書や経巻奥書の中にも確認されます。「装潢師」という技術者が写経所内で仕事をしていたとされています。経典などの書物を書写するために使用する和紙の染色や紙継ぎ、裁断などが主な職業内容であったようです。

私たちは設立以来、この「装潢」という語に新たな意味を加え、主に紙や絹を中心とする素材で構成された文化財の保存修理を行う分野の総称として提言し、活動しています。

平成7(1995)年には国の選定保存技術に「装潢修理技術」が選定され、近年では我が国のみならず、国際的にも認知されつつあります。

装潢分野の修理

日本・アジア地域には、実に様々な文化財が継承され残っています。その代表的なものとして、紙・絹等を基底素材(作品を描いたり書写したりする基の 素材)とする絵画、書跡・典籍、古文書、歴史資料、染織品等が挙げられます。また、それらは、掛軸や巻子・屏風、冊子等の形態に装丁されています。さらに 構成材料(作品を描いたり書写したりする使用素材:絵具、墨など)に関しても様々であり、形状、内容ともに多岐に及びます。

装潢分野においては、このような文化財全般に対し、総合的に保存修理を行っております。

千年とも言われる伝統的な技術と現代の科学的根拠、学術的知見などを基とし、修理方針の選択、処置を行います。これは、作品本体の修理のみならず、継承されてきた形状、作品の持つ風合い、品格、用途等、様々な状況を考慮することが必要であると考えるからです。

参考文献 ウィキペディア 文化財の保存と修復 文化財保存修復学会/編

国宝装潢師連盟/装潢修理技術について

 

 

 

正倉院の真実?!

表具屋という立ち位置と正倉院とのつながりは直接の結びつきはないのですが、【保存】という視点から触れて置きたいと思います。

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正倉院の校倉造り

校倉(あぜくら)の利点として、湿度の高い時には木材が膨張して外部の湿気が入るのを防ぎ、逆に外気が乾燥している時は木材が収縮して材と材の間に隙間ができて風を通 すので、倉庫内の環境を一定に保ち、物の保存に役立ったという説があった。しかし、実際には、重い屋根の荷重がかかる校木が伸縮する余地はなく、この説は 現在は否定されている。

建造物の超室作用に着目したのは卓見ですが、その説明を気の隙間の開閉に求めたことは、残念ながら間違っていると言わざるえません。つまり、外気に対して、庫内での相対湿度の犯科が緩和されてきたということは事実ですが、結論から言えば、それは木自体に備わっていた吸放水による調湿機能に基づくものです。宝物はヒノキ製の建物、言い換えれば、大きな木の箱の中に収められています。そして、ほとんどの宝物は、庫内でさらに杉製の唐櫃(からびつ)のなかに収められていました。つまり、外気に対して、二重の木の箱に入れられていたとみなすことができます。

それと合わせて、建物が高床で床下の風通しが良いこと、また唐櫃(からびつ)自体もほとんは有脚で床との間に隙間があったことも湿気を防ぐために重要でした。

これらを一般住宅に置き換えると、押入れなどに仕舞うときは押入れの下ではなく、上の段に収めるといった簡単な気遣いで環境がかなり改善されると思われます。

人も建物も「風通しが良い」ことが肝要であるというところでしょうか。

参考文献 ウィキペディア、「文化財の保存と修復」文化財保存修復学会/編

 

 

 

止め切り(とめきり)定規と止め打ち金具(とめうちかなぐ)

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上が、止め切り(とめきり)定規、下が止め打ち(とめうち)という道具です。「止め」とは、額や屏 風の四隅の仕上げ方法一つで、縁を45度に裁断し、縦と横で合わせ四隅を90度で仕上げます。現在では、丸ノコなどを利用し、早くて正確に45℃に裁断で きますが、いずれにせよ最終的な微調整は【人の手加減】が決めます。