■ 巻物の隠れた役割 ■

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現在、日本画の流行として絵の具を立体的に盛る技法が盛んなようです。
当然、その作品の仕上げ方法として、額装が選択されることが少なくありません。
なぜ、額装なのでしょうか?
それは絵の具を盛ることによって掛け軸のように巻き込むことで画面がゆがみ絵の具が
剥落することを避けるためです。その解決方法として、100年ほど前に太巻きといわれる
もので、桐製で直径2寸ほどの大きな真を作り、それに巻き込む方法がとられました。
そうすることで、画面のゆがみを最小限に押さえようとしたのです。しかし、作品自体が
年々大きくなり、額装にした方がより自然のながれになり、現在に至っております。

今回、ご紹介するのは掛け軸の隠れた保存方法なのです。
掛け軸の基本構造は、作品+肌裏紙+増裏紙+総裏紙で構成されたいます。
私たちの目に直接触れるのは最後に使われる「総裏紙」になります。この総裏に使われ
ている紙はしなやかで厚みのある紙です。紙を漉くときに吉野でとれる「白土}を
混ぜ込みます。この白土の役割は、掛け軸全体のバランスを保つことのほかにもう一つ
大切な役割があるます。それは、「劣化」から作品を守ることです。
作品は長い間に空気中にさらされ、紫外線などを含む光にもダメージを毎日少しずつ
受けています。掛け軸の場合巻き込むことで収納の面からも、場所をとらず、光にもさ
らされず、そして酸性物質からも守ります。白土はアルカリ性を示します。巻き込むこ
とで作品の面をアルカリ性の白土が入っている紙で覆われ酸性からまもっているのです。
現実として、現在額装より遙かに多くの軸装作品が残されています。
もっとも額装も日々進化をしており、紫外線をカットするアクリルなども開発されてい
ます。近年では鑑賞妨げになる光の反射をしないアクリルなども開発されています。

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