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■色彩感覚■

現在50代で割とどんな色でも抵抗なく受け入れられるしいろんなチャレンジもしている。
しかし、20代のころは、実は茶系が好きでついつい仕入れる材料も茶系が多かったような気がする。
30代は逆に青系をお多く使ったような気がする。
あくまでも感覚と記憶なので確かなデーターがあるわけではないが。

色から受ける印象は生活環境によってどんどん変わっていくのだと思う。
なぜなら、夏にクーラーのよく効いた部屋で見る絵画とそうでない部屋で見る絵画はやはり違うと思う。
目から入ってくる情報の順番は、色、大きさ、形の順番だと言う。
毎日、新聞に挟まれてくる広告を見ても確認できる。
本当によく考えられていると感じる事がある。
色の対比のさせ方で、お互いを引き出している。
伝えたいところは大きくセンターに。は基本中の基本だ。

そして、次に来るのが【音】そして【光(照明)】の影響力もかなりあると思う。風鈴の音を聞きながら琥珀色の酒を傾ける。口元に近づけると泡のはじける音がする。。

■ 何故、掛け軸は数百年前の作品を残すことが出来たか?  ■

まず、これを説明するためには掛け軸の構造を知っていただかなくてはなりません。

基本的には表側から本紙→肌裏紙→増し裏紙→総裏紙の順番でつくられています。

本紙 (紙の場合を紙本、絹地の場合は絹本と呼ぶ)

肌裏 (基本的に美濃紙と呼ばれ、薄くて張りのある丈夫な紙)

増し裏(美須紙と呼ばれ、楮に石灰を混ぜ込んだ柔らかくしなやかな紙)

総裏(宇田紙と呼ばれ吉野で取れる白土を混ぜ込み作られる割とシッカリとした紙

直接われわれの眼に触れるのは総裏に用いる宇田紙です。数百年も前の作品を見ると、はるかに額装より、軸装のほうが多く残されています。

なぜか?
最初に一言付け加えておきますと、物を劣化させる物質は全て酸性であるといわれております。保存に一番適している状態は中性~弱アルカリ性だといわれております。

それを頭に入れておいてください。

それでは解答です!
それは光や空気に触れないからだといわれております。

現在では、家の中で火を起こし煙がでるなんて事はあまり見受けられないようになりましたが、昔は現在の額のように硝子やアクリルなどで保護をするものがありませんでしたし、常に光にさらされていました。

1年を通しての天候による温度差、湿度差、光(紫外線)など、本紙が直接影響を受けていました。

掛け軸はというと、巻き込むことで光を遮断し、空気中を漂っている粒子(酸性物質)から護り、さらに、本紙の表面には巻き込むことで総裏紙に練りこまれた 白土(弱アルカリ)に護られる(中和される)というわけです。また、糊自体は酸性なのですが、美須紙、宇田紙に含まれる石灰、白土のアルカリ性で中和され ます。

このように書いてきますといいところばかりのようですが、実は欠点もあります。

巻き込む事で作品の画面をゆがめてしまうことなのです。本紙の上に乗っている顔料が剥落する恐れがあるのです。

また、取り扱いがなれないと収納するときに皴(しわ)や折れが出てしまうことがあるのです。画面が折れた状態で巻き込むという行為が何度も繰り返されると限界を超えたとき、断裂してしまいます。

現在の日本画は洋画のように顔料を盛る技法が盛んです。そのため、軸装より額装のほうが多く作られるようになりました。

表装するときにはこれらの事を十分踏まえてどんな装飾にするのかご判断ください。

100枚の和紙を手で触っただけで薄いものから厚いものへ順番に並べる方法

手漉き和紙は、文字通り人の手で漉かれるので手漉き和紙といいます。

最近は、道具の改良でかなり均一な紙が漉けるようになりましたが、それでもその人

の癖、体調、気候、材料などが機械で作られるパルプなど比べるとその時々で違った

紙が出来ます。

昔の人はそれと上手に付き合い、むしろ利用してきました。

例えば、紙の上下左右の厚みが違えば、そのときに必要な分だけ取り、左右たがえ

違いに置き、上下の厚みが違えば厚いものと薄いものが重なるように順番に使うなど

の工夫をして来ました。その工程と作業を支えているのが最初の作業として、

紙を厚いものから薄いものへと並び替えるという作業、これが出来たからです。

そういったひと手間を加えることで、誤差を埋めることが出来たのです。

では、「100枚の紙を手で触っただけで薄いものから厚いものへ十番に並び替える方法をご説明いたします。

まず、目の前の100枚の紙を3種類の「厚さ」に分けます。(人間の手の感覚だけ

でも十分出来ます)

その3種類とは、自分の手の感覚で厚いもの、薄いと感じるもの、そしてその中間の

もの以上の3種類です。一番最初の紙を基準とします。これを中間とします。

そして、2枚目、3枚目と手の感触で分けていきます。もし、最初に中間と決めた紙

が3種類の中で一番薄いグループならば、そのときの分類上は、中間のもの、

やや厚いもの、厚いものに分けることが出来ます。あるいは、最初の中間が一番

厚ければ、やや薄いもの、薄いものに分けられます。3つに分けるところが肝です。

すると・・・目のまえには3つの紙の山が出来上がります。この3つの山をさら

にそれぞれの山ごとに3種類の「厚さ」に分けていきます。

100枚の紙→厚い山 ⇒3つに分ける⇒さらに3つに分ける→さらに3つ

(33枚)  (11枚) (3枚か4枚の山) (1枚の山)

中間の山 →    →         →

(33枚) (11枚)  3枚か4枚の山) (1枚の山)

薄い山  →      →          →

(33枚) 11枚) (3枚か4枚の山) (1枚の山)

このように一度に100枚は無理でも、細かく分類することで綺麗に薄いものから

順番に並び替えることが出来るのです。これが先人達の知恵です。

■ 巻物の隠れた役割 ■

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現在、日本画の流行として絵の具を立体的に盛る技法が盛んなようです。
当然、その作品の仕上げ方法として、額装が選択されることが少なくありません。
なぜ、額装なのでしょうか?
それは絵の具を盛ることによって掛け軸のように巻き込むことで画面がゆがみ絵の具が
剥落することを避けるためです。その解決方法として、100年ほど前に太巻きといわれる
もので、桐製で直径2寸ほどの大きな真を作り、それに巻き込む方法がとられました。
そうすることで、画面のゆがみを最小限に押さえようとしたのです。しかし、作品自体が
年々大きくなり、額装にした方がより自然のながれになり、現在に至っております。

今回、ご紹介するのは掛け軸の隠れた保存方法なのです。
掛け軸の基本構造は、作品+肌裏紙+増裏紙+総裏紙で構成されたいます。
私たちの目に直接触れるのは最後に使われる「総裏紙」になります。この総裏に使われ
ている紙はしなやかで厚みのある紙です。紙を漉くときに吉野でとれる「白土}を
混ぜ込みます。この白土の役割は、掛け軸全体のバランスを保つことのほかにもう一つ
大切な役割があるます。それは、「劣化」から作品を守ることです。
作品は長い間に空気中にさらされ、紫外線などを含む光にもダメージを毎日少しずつ
受けています。掛け軸の場合巻き込むことで収納の面からも、場所をとらず、光にもさ
らされず、そして酸性物質からも守ります。白土はアルカリ性を示します。巻き込むこ
とで作品の面をアルカリ性の白土が入っている紙で覆われ酸性からまもっているのです。
現実として、現在額装より遙かに多くの軸装作品が残されています。
もっとも額装も日々進化をしており、紫外線をカットするアクリルなども開発されてい
ます。近年では鑑賞妨げになる光の反射をしないアクリルなども開発されています。

❏ 軸先 ❏

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今回は軸先についてお話しします。
軸先には、金軸、塗り軸、象牙、黒檀、紫檀、白壇、樹脂、プラスチックなどがあります。
それぞれ役割というか用途が決まっていて、その関係について紹介いたします。
作品を際だたせるための一つの目安とお考えください。
金軸    御名号・経文・仏画・
水晶    美人画
黒塗    御名号・経文・般若心経・仏画
朱塗    御名号・経文・般若心経・仏画
蒔絵    武者・美人・雛
一位、面金 神号
瀬戸軸   美人画・墨跡・色紙・短冊・和歌・俳画
象牙    人物・美人画・水墨山水・花鳥
角千段   美人画・武者
紫檀    七言・五言・二言・細字

あくまでも、作品の特徴を生かすためのものですので、絶対ということではありません。
このような使われ方をしたものが多く残されているということです

作品の選定作業とは・・・

 

 

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上が最終的に選ばれた作品です

 

 

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この作品は読みやすく漢字的な手法を使ったのですが、堅い感じがしてしまいかな文字らしさが伝わらなくなってしまった。

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この作品は、3ヶ月間県内を巡回する事を考慮し春らしいピンクではなく、黄色の入った紙を使ってみたが、額のマットとの相性が今ひとつマッチせず見送りとなる

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この作品は、淡いピンクのばかしの入った紙を使ったので柔らかさは出たが、印章が大きすぎるのではないかと思い候補から外れる

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この作品は、印章を小さくし、文字の使い方もかならしく繊細で春らしいイメージに仕上がったが・・・黄色がマットとそぐわない処が気になる。。。

 

悩みに悩んだ末・・・下記の作品に決まりました。
たった一つの作品を生み出すのには相当の苦労があるのです。ここに紹介できなかった何十枚の作品がこの一つの作品の裏側にあります。
今回は新潟女流展に出展されたMさんの作品をお借りして紹介いたしました

 

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【装潢手、経師師、表具師の違い】

地域のよる、呼び名の違いと思っていましたが調べてみるとなかなかおもしろいもので、私自身楽しく知識を深めることができました。どうぞ、お時間のあるときにご覧ください。

 

京表具の歴史は,長らく京都が日本の都であったことから,即ち,日本における表具の歴史といえます。

表具の歴史をさらに遡りますと,その発祥は中国。蔡倫(さいりん)による製紙法(105)の改良により,紙が普及する3~6世紀頃,「書画を挂(か)け拝する」という意味の『挂軸』という言葉が出現します。

中国における表具は,竪巻の挂軸として王家の書画を表装することに始まり,隋・唐時代には仏教の隆盛に伴い,仏典・経典の漢訳や書字が国家の事業として行われると,横巻の経巻が出現します。

いずれにせよ,書画の保護と装飾を目的とすることに相違なく,書画を裏打ちし,表装し,軸と八双竹をつけ,軽くて移動や保存に便利な軸装の技法です。

そんな表具の技法が。仏教の伝来とともに日本へ伝わったのは,六世紀の初頭。その証左として,例えば,大宝律令(701)には「図書寮を設け、図書、経籍をはじめ、校写・装溝(そうこう)・筆墨のことを掌(つかさど)らしむ」とあります。装とは料紙の裁断や継ぐことを意味し,潢とは料紙を染める(防虫のために黄檗な樹皮の汁で紙を染める方法で唐において始まった)ことを意味します。

聖武天皇(724―749)在位の頃には,朝廷に写経司(のちの写経所)が設けられ,経師(写経生)・校生(校正)・装潢手・題師・瑩生などの職が置かれました。

なかでも装潢手は,料紙を調えるだけでなく,界線を引き,軸・表紙・紐を装し経典に仕立てる役職で,表具師の前身といえます。経師と装潢手は経巻製作の中心的な役割を担い,他職にくらべて最高の給付を受けていましたが,平安時代に入ると,学問本位の南都仏教に代わり,加持祈祷や修行本位の天台・真言の密教が台頭します。そのために国家事業としての写経は衰退し,写経所は廃止されました。

そうして官職を失った写経所の職人は,民間へと技を発揮する道を求めていきます。

参考文献 京文化通信より

【各団体の紹介と役割の違い】

それぞれの団体の概要を抜き出してみたのですが、表現や目的の違いにも目を向けると興味深いものがあるようです。

【国宝修理装潢師連盟】http://www.kokuhoshuri.or.jp/01_about/index.html

国宝・重要文化財を中心とした文化財(美術工芸品)の保存修理を専門的に行っている修理技術者集団です。主に日本・アジア地域で製作された「絵画」「書跡・典籍」「古文書」「歴史資料」などを修理対象としております。

国の選定保存技術「装潢修理技術」の保存団体として技術の発展及び向上を図り、文化財修理及び関連する諸事業を通じた社会貢献を行っています。

【全国表具経師内装組合連合会】http://tokyo-hyougu.jp/zenpyoren.html

当協会は、表具・経師・内装インテリアという3つの大きな業種部門から成り立って居り、それぞれに卓越した技能を保持または伝承する会員で構成され、現代に輝かしい実績を維持しております。

しかしながら長い伝統を持ち、日本人の生活の中に生き続けてきた「表具」「経師」も現代社会の多様化する形態に応じて新しい方向性を期待されていることも事実です。

これまで培い養われてきた日本の伝統技術・技能を正しく保存・継承しつつも、そのうえに社会やユーザーのニーズに合わせ創意工夫を重ねて新しい技術の展開を図る事、それが技能集団である我々協会に課せられた課題であります。

会員の専門技術、知識の向上ならびに社会的経済的地位の向上を図ると共に、日本固有の伝統技術の保存と継承を積極的に行い、この分野の技能に対する社会的評価を高め、もって表具経師内装業界(表装・襖・内装・額・屏風・衝立などを手掛ける事業)の健全な発展と文化・公益に寄与することを目的としています。

【文化財保存修復学会】http://jsccp.or.jp/

文化財保存修復学会は、文化財の保存に関わる科学・技術の発展と普及を図ることを目的とした学会です。文化財保存にさまざまな立場から携わる専門家が集まり、研究、教育、一般向けの文化財に関わる知識の普及など活発な活動が行われています。

【文化財保存支援機構】(JCP)  Japan Conservation Project

私たち文化財保存支援機構は、「文化財」の保存活動を通して「人間にとって大切なもの」「失ってはならない大事なもの」を、未来に伝えていきたいと考えています。「文化財」とは、人間が地上に生を受けてから連綿と紡ぎ出し、営々と積み上げてきた歴史と文化の証しであり、生活の英知と美意識の結晶に他なりません。国が変わり、言葉が変わり、民族が異なっても、その価値が変わることはないでしょう。私たちは、これら人類共通の遺産を護り、育み、次世代に伝えていくために組織されたNPO法人です。

ちなみに私が参加している団体は、このJCPです。

【博物館・美術館・ギャラリーそれぞれの違い】

以前、お客様から尋ねられ、答えられなかったことから調べてみました。

 

【博物館】

簡単に言うと、図書館以外の展示施設は総じて「博物館」になるのです。この中には動物園や植物園なども含まれます。
名乗りについては、特定の展示ジャンルにとどまらず広範に収蔵しているところが何も付かない「博物館」になると思います。ジャンルを美術に絞っていれば、「美術(博物)館」になるわけです。
“美術館と博物館の違いはなく、美術館は博物館の一部である。”

出典【朝日マリオン・コム】美術館 素朴なクエスチョン

(YAHOO知恵袋より抜粋)

【美術館】

美術館とは、博物館の扱う分野のうち、ごく限られた「美術」を独立させた施設。
博物館には大別して歴史系と自然史系があり、歴史の中には考古や経済、政治、文化があって、その文化史の一部を独立させたのが美術館だそうです。
美術館は美術作品を中心に文化的な作品を収集・展示・保存し教育・普及・研究を行う施設を指します。
中には東京都現代美術館のように収集や保存は行っていない美術館もありますが、たいていは収蔵品を常設展示するか、他から作品を借り受けて企画展示を行っています。
また、学芸員や美術作家などによるワークショップなども行い美術教育・普及の活動をしています。

【アートギャラリー】

画廊とも呼ばれ主に画商・美術商が経営しているものが多く、多くは販売目的の企画展示が主。
あるいは貸し画廊も同時に行っているケースも多々あります。
極めて稀に公共的なギャラリーが貸しギャラリーの合間に美術普及を目的とした企画展示を行うケースもあります。

(YAHOO知恵袋より抜粋)

【文化財における修理と修復の違い】

これにつきましては様々な考え方、見方があると思いますが、美術品に対しての考え方が時代により移り変わってきたことも要因にある考えられます。
もちろん時代にもよりますが、一例を挙げますと、「美人画」などは現代において、エックス線を照射することで、使われている絵の具の成分や絵の具の層
までもわかるようになりました。ある時代の物は、女性の裸体から描き始め、肌着を着せ、幾重にも丁寧に一枚一枚描いていったそうです。
つまり【命】を吹き込んでいくという考え方が根底にあるのだと思われます。この場合、絵画が損傷したときにわからないようにすべてを描ききる作業がされたそうです。
元通りにもどす技術【修復】。最近では、作者以外者が手をいれるということは、オリジナリティーが損なわれるということから絵の鑑賞、保存に妨げにならない
処置、命ではなく、美術品としての対応をしているようです。そこが【修理】ということになるのではないかとおもいます。
もっと詳しくお調べになりたい方は、下記をご参照ください。

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※画像は文章と直接の関係はありません。

「参考文献」

【東京文化財研究所】
日本における近世以前の修理・修復の歴史について
http://bit.ly/10Sjynh